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Flickering Light
by Alex Ullman, June 20, 2017

ここ1年ほど、Pauperには《幽霊のゆらめき》を搭載したデッキが存在し続けている。このアヴァシンの帰還のインスタントはそれ自体が強力なわけではないが、むしろPauperの主要な要素の1つ(戦場に出た時の能力を持つクリーチャー)との相乗効果がある。これらのカードはこのフォーマットのバックボーンであり、それらの価値を理解することがフリッカーデッキと呼ばれるものに対しての知識を増やすことへとつながる。しかしまずは下準備をしよう。

Pauperは、ある意味では、リソースの制約によって定義されている。コモンに限定されていることでフォーマットは主にお馴染みの効果を中心に回っている。これらの効果を再利用することが何年間も複数のデッキのバックボーンとなっている。フォーマットのパワーレベルがほとんど均一である場合、あらゆる追加の利用法は重大なアドバンテージになる可能性がある。黒単コントロールはこのコンセプトに則っていて、クリーチャーを繋げて徐々にアドバンテージを積み上げようとする。《発掘》はマナを踏み倒しながらさらに追加の脅威を生み出す手段として使われた。初期は黒いデッキがこの点において一番だったが、すぐに白と青のデッキが権威を手にした。

これは《一瞬の瞬き》とともに始まった。《熟考漂い》や《騒がしいネズミ》のようなカードと組み合わせたエスパーブリンクはPauperがフォーマットとして制定される以前はありふれたものだった。このデッキは戦場に出たときに誘発する能力を《一瞬の瞬き》で活用しようと試みて、《騒がしいネズミ》や《盲目の狩人》の追加の利用法を見出していた。想起した《熟考漂い》を対象に取った場合、3白青でカード4枚と飛行を持つ魚を得たことになる(言うまでもなく、その後のゲームではフラッシュバックによって君のクリーチャーを守ることができる)。この戦略は未だに最高の成績を残してはいないが人気であり続けている。

遅い《一瞬の瞬き》は《コーの空漁師》と《夢で忍び寄るもの》によって補完され取って代わられた。これらのデッキは長期戦を見据えることが多く、盤面に寄与しながら利益をひねり出そうとする。《現実の酸》に基づいたデッキはこれらのクリーチャーと《一瞬の瞬き》を取り上げてとても遅い疑似《名誉回復》を毎ターン唱えることができた。そしてこれらのデッキはアヴァシンの帰還まで存在していたが支配的になることはなかった。クリーチャーの追加の利用法を見出せるのは良かったが、ゲームを壊すのは難しかった。

《幽霊のゆらめき》がこの計算を変化させた。《一瞬の瞬き》が追加の効果を1つ生み出すのに対し、《幽霊のゆらめき》はわずか3マナで2倍のことができた。これだけでも素晴らしいが、《記憶の壁》や《古術師》と組み合わさるとこれは3マナ毎にループを作り出す。このエンジンは《フェアリーの大群》と後の《流浪のドレイク》と共にPauperを支配したコンボデッキのバックボーンだった。このループでは好きなだけのマナを生み出すことができ、そのマナにはPauperの歴史を通して複数の使い道があった。最初は(禁止になるまでは)《時間の亀裂》だった、(《フェアリーの大群》が禁止になるまでは)《賢者街の住人》で、それから(《流浪のドレイク》が禁止になるまでは)《とどろく雷鳴》だった。《幽霊のゆらめき》はいくつかのPauper最高のコンボデッキの一部だったがそれが最高のカードであることはなかった。むしろ悪事への強力な誘引者ではあるが、それ自体は複製品と同程度の強さしかない。

今日の《幽霊のゆらめき》はどうなっているのか?それはトップのデッキ2つの重要構成要素であり続けている。まずはディミーア・フリッカー。これは戦場に出たときの能力を持つクリーチャーを利用してゲームをコントロールするデッキとして黒単コントロールに取って代わったデッキだ。
ディミーア・フリッカー janicestone, Top 32 June 11 Pauper Challenge
クリーチャー(14)
2 《古術師/Archaeomancer》
4 《騒がしいネズミ/Chittering Rats》
4 《熟考漂い/Mulldrifter》
4 《海門の神官/Sea Gate Oracle》
インスタント(14)
1 《残響する衰微/Echoing Decay》
1 《墓の刈り取り/Reaping the Graves》
2 《幽霊のゆらめき/Ghostly Flicker》
3 《見栄え損ない/Disfigure》
3 《破滅の刃/Doom Blade》
4 《対抗呪文/Counterspell》
ソーサリー(10)
1 《綿密な分析/Deep Analysis》
1 《発掘/Unearth》
4 《チェイナーの布告/Chainer’s Edict》
4 《定業/Preordain》
土地(22)
5 《沼/Swamp》
6 《島/Island》
1 《やせた原野/Barren Moor》
1 《孤立した砂州/Lonely Sandbar》
1 《光輝の泉/Radiant Fountain》
4 《ディミーアの水路/Dimir Aqueduct》
4 《陰鬱な僻地/Dismal Backwater》
サイドボード(15)
2 《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》
3 《吐き気/Nausea》
3 《嵐縛りの霊/Stormbound Geist》
3 《ゾンビの異国者/Zombie Outlander》
4 《水流破/Hydroblast》
先に繰り返したPauperの《幽霊のゆらめき》デッキと違ってディミーア・フリッカーはデッキ名になっているインスタントで無限大のマナを生み出したりはしない。それよりもむしろ《古術師》と《騒がしいネズミ》でループを回して対戦相手の新しいドローをロックする。この時点で2/2クリーチャーの軍隊が占領していて、こつこつとライフを減らしていく。ディミーア・フリッカーは《流浪のドレイク》が禁止された後で、《ゆらめき》―《古術師》エンジンの最適な居場所として隆盛した。《騒がしいネズミ》、《海門の神官》そして《熟考漂い》がいる中で、《島》と《沼》が詰まったこのデッキは187能力を再利用するのに完全にフィットしている。

ディミーア・フリッカーはずっとこのフォーマットに存在していたが支配的な勢力になるのは難しかった。それは部分的には、このデッキは勝利に向かい始める時点まではとても公正なゲームをしなければならないからだ。高品質なカードがいっぱいに詰め込まれてはいるものの、依然としてそれらを比較的公正な方法で唱えようとする。モダンマスターズ2017までは対戦相手の新しいドローをロックすることが《幽霊のゆらめき》の最高の使い方だった。

《ディンローヴァの恐怖》がそのすべてを変化させた。このコモン落ちが《ゆらめき》コンボに別の使い道を与えた。最新の再録セットが発売された直後、ウルザトロンを利用して《ディンローヴァの恐怖》、《記憶の壁》、そして《幽霊のゆらめき》によってゆっくりと相手の場のパーマネントをすべて除去しようとするデッキが出現した。ディンローヴァ・トロンは相手への干渉手段をほとんど諦めて、《禁忌の錬金術》や《ムラーサの胎動》のようにコンボをつなぎ合わせるカードや、生き残るのに役立つ《一瞬の平和》を優先している。このデッキは追加の《ディンローヴァの恐怖》として《激情の共感者》を採用したオリジナルのバージョンからいくつかの進化を遂げている。kungfutreesはこのデッキの最新バージョンで6月11日のPauper Challengeの首位を勝ち取った。
ディンローヴァ・トロンkungfutrees, Winner June 11 Pauper Challenge
クリーチャー(8)
1 《ディンローヴァの恐怖/Dinrova Horror》
3 《記憶の壁/Mnemonic Wall》
4 《熟考漂い/Mulldrifter》
インスタント(16)
1 《禁制/Prohibit》
2 《輪作/Crop Rotation》
2 《禁忌の錬金術/Forbidden Alchemy》
2 《幽霊のゆらめき/Ghostly Flicker》
2 《一瞬の平和/Moment’s Peace》
2 《神秘の指導/Mystical Teachings》
2 《ムラーサの胎動/Pulse of Murasa》
3 《衝動/Impulse》
ソーサリー(2)
1 《綿密な分析/Deep Analysis》
1 《とどろく雷鳴/Rolling Thunder》
アーティファクト(12)
4 《探検の地図/Expedition Map》
4 《予言のプリズム/Prophetic Prism》
4 《シミックの印鑑/Simic Signet》
土地(22)
3 《島/Island》
1 《憑依された沼墓/Haunted Fengraf》
1 《離れ島/Remote Isle》
2 《茨森の滝/Thornwood Falls》
3 《ゆらめく岩屋/Shimmering Grotto》
4 《ウルザの鉱山/Urza’s Mine》
4 《ウルザの魔力炉/Urza’s Power Plant》
4 《ウルザの塔/Urza’s Tower》
サイドボード(15)
1 《転覆/Capsize》
1 《ディンローヴァの恐怖/Dinrova Horror》
1 《ファングレンの匪賊/Fangren Marauder》
1 《もつれ/Tangle》
2 《払拭/Dispel》
2 《ゴリラのシャーマン/Gorilla Shaman》
2 《一瞬の平和/Moment’s Peace》
2 《不憫なグリフ/Wretched Gryff》
3 《青の防御円/Circle of Protection: Blue》
僕はこれがディンローヴァ・トロンの最高の型だと思っているが、Pauperでは墓地対策が一般的なのでデッキ名になっているカードの2枚目が入る枠を探してみたいと思っている。そうは言っても、このデッキは大量のカードを見ることのできるコンパクトなコンボパッケージだ。《神秘の指導》と《衝動》が重要要素を探す一方で《輪作》と《探検の地図》はウルザトロンを集めやすくする。このデッキはイゼット・デルバーのようなデッキの攻撃的な初動や打ち消しに弱いように見える、そこで奇妙かもしれないがサイドボードに《青の防御円》が1枚入っている。これは絶えず存在する青いデッキ相手に生き残る上で理にかなっている。

前進するなら、僕は追加の《禁制》を当てはめられないかどうか調べてみたいと思う。《禁制》は柔軟な打ち消しで、他の打ち消し呪文に対抗できるだけでなくこのフォーマットの多種多様な脅威に対して有効だ。豊富なマナがあるならばこのデッキに《卑下》の居場所があるかどうかも調べてみたい。

6月11日のChallengeではトップ16にさらに面白いデッキが登場している。《不屈の部族》コンボは《幽霊のゆらめき》を備えておらず、代わりに《噴出》を一撃必殺の燃料としている。1枚の《裏返し》により、《噴出》1枚が16点分のダメージになる。《不屈の部族》コンボは何年もフォーマットの末端にいるが、今だけは目に見える結果を出している。
不屈の部族コンボ greenprinny, Top 16, June 11 Paper Challenge
クリーチャー(8)
4 《ボーラスの占い師/Augur of Bolas》
4 《不屈の部族/Tireless Tribe》
インスタント(23)
2 《目くらまし/Daze》
2 《払拭/Dispel》
2 《万の眠り/Gigadrowse》
3 《渦まく知識/Brainstorm》
3 《堂々巡り/Circular Logic》
3 《噴出/Gush》
4 《裏返し/Inside Out》
4 《シャドーの裂け目/Shadow Rift》
ソーサリー(10)
1 《空間の擦り抜け/Slip Through Space》
2 《定業/Preordain》
3 《思案/Ponder》
4 《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》
土地(19)
4 《平地/Plains》
9 《島/Island》
3 《灰のやせ地/Ash Barrens》
3 《進化する未開地/Evolving Wilds》
サイドボード(15)
1 《空間の擦り抜け/Slip Through Space》
1 《暁の魔除け/Dawn Charm》
1 《綿密な分析/Deep Analysis》
1 《解呪/Disenchant》
2 《嵐縛りの霊/Stormbound Geist》
3 《水流破/Hydroblast》
3 《未達への旅/Journey to Nowhere》
3 《軍旗の旗手/Standard Bearer》
いろいろな意味でこのデッキは懐かしき《サイカトグ》デッキ(ただし《激動》無し)と似ている。手札を貯め込んだあとで《不屈の部族》に回避能力を付け、パワータフネスを入れ替えて頑強な守備をドラン風の勢力へと変えることを目指す。このデッキは《稲妻》やその他赤の除去に対して信じられないくらい強く、対象を取る黒の除去が低迷しているメタゲームで繁栄することができる。Pauperは現在《破滅の刃》効果が不足していて、(ディンローヴァ・トロンや《不屈の部族》コンボのような)単一の脅威を軸にしたデッキが優位に立てるようになっている。まだこの《噴出》デッキには続報があるかもしれない(これを書いている時点で、6月18日のPauper Challengeでトップ16にさらに2つ入ったらしい)、そしてこのフォーマットの変わった多様性を示すのに一役買ってくれるかもしれない。

Pauper ChallengeがPauperのメタゲームにどのように影響するのか、僕らにが知っているのはまだその初期段階だ。にも関わらず、最初の4週が過ぎて、4つの異なるデッキが勝利を収めた。破滅の刻まであと数週間と迫っている、その手を遅めるよりむしろ早めるようなまた大きな変化がPauperに訪れるかもしれない。

コメント

nophoto
ぺりー
2017年6月25日1:28

翻訳ありがとうございます。すごい勉強になります

surucucu
2017年6月26日0:24

そう言っていただけると翻訳した甲斐があります!

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