【翻訳】Pauper禁止改訂について by Alex Ullman
2013年2月10日 翻訳 コメント (7)Star City GamesのサイトでAlex Ullmanという方が毎月Pauperの記事を書いています。
個人的には当たり外れの大きい記事だと思いますが、今月は面白かったので翻訳なんてことをしてみました。意訳しまくりの拙訳ですが興味があったらどうぞ。
シミック感染やディミーア感染は無理矢理GTCを絡めた感がありますが、その他はだいたい納得できる気がします。
The January Pauper Bans by Alex Ullman 2/01
http://www.starcitygames.com/article/25606_The-January-Pauper-Bans.html
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Pauperの禁止リストにカードが加わるのは、フォーマットが制定されてからたったの2回目だ。しかも、禁止リストはもとの2枚から5枚に、250%増しだ。
2月6日以降、Pauperの禁止リストは
《頭蓋囲い/Cranial Plating(5DN)》
《大あわての捜索/Frantic Search(ULG)》
《ぶどう弾/Grapeshot(TSP)》
《巣穴からの総出/Empty the Warrens(TSP)》
《激励/Invigorate(MMQ)》
となる。
変化っていうのは恐ろしいもんだ。
この改訂のもたらすものを深く掘り下げる前に、ハッキリさせておきたい。僕は、「僕の信じるPauperのあるべき姿に基づく」ならば禁止しなきゃならないものの事なんて考えていなかった。Pauperは始めにコモン限定の競技マジックとして制定された。フォーマットが成長するにしたがって、メタゲームは長期間停滞し、新セットがリリースされたときの1,2個の革新によって特徴付けられてきた。(コンボ)デッキは、より多くのカードがあるより広いフォーマットの方が強い傾向にある。《激励/Invigorate(MMQ)》と「感染」のように意図的でない結果を招くこともある。
それでも、このフォーマットはギリギリのバランスで存続してきた。僕らは変えないことを支持してきたんだ。何故ならば、支柱を引っこ抜いてしまうことで他のデッキがフォーマットをひっくり返してしまうのが怖かったからね(まして2本だ)。こういう恐れっていうのは大体において根も葉も無いもので、未知のものへの恐怖心のせいにすることが出来る。感染はストームを抑制するために不可欠だったし、ストームは色んなデッキを「フェア」に保ってきた。この2つの極端なデッキを取り去ってしまうってことは、「ぶっ壊れた」ことをするデッキのほとんどは《雲上の座/Cloudpost(MRD)》ベースのデッキみたいなヤツだってことだ。フォーマットがこの転換を処理できるかどうかは時が教えてくれるだろう。
これはさっき言ったイタリック体のところ(訳注:僕の信じるPauperのあるべき姿のこと)に繋がる。僕のフォーマットに対する個人的な意見は僕のフォーマット認識に基づいている。
ウィザーズは、この記事の執筆時点では、彼らがPauperに付いてどんな見通しをもっているのかを明確に示してはいない。エターナルフォーマットであり、(それ単独でも独自の競争コミュニティでもありながら)しかし他の競技プレイへの入口でもある。もし彼らがフォーマットの行く末の明確なヴィジョンを示してくれたら僕は(そして他のみんなもきっと)安心できるんだろうけど、今回の禁止から今後のフォーマットの方向性を読み取ることはできる。暗示された方向性っていうのは「シルバーバレットを持ってるか?」って問題を投げかけてくるようなフォーマットとはかけ離れている。
フォーマットからカードを取り除くってことには別の根本的な恐ろしさがある。滑りやすい坂道みたいにね。Pauperは競技フォーマットで、そこには、ある戦略を取り除くことでコモン限定のマジックが他のものに劣ってしまうんじゃないかって不安がある。エキサイティングで常軌を逸したプレイに満ちたPauper。具体的な不安っていうのは《スケイズ・ゾンビ/Scathe Zombies(10E)》に対する《ルーン爪の熊/Runeclaw Bear(M12)》みたいなものなんだろう。
何の根拠もないけど、ウィザーズはカードを直ぐに禁止したりはしない。カードを取り除くことはPauperを「易しくする」ための試みじゃなかった。この禁止はフォーマットを遅くすることで活気を注入するための措置のように見える。今では、《雲上の座/Cloudpost(MRD)》が揃いだしてゲームを支配しきる前のゲームの中盤を戦うことに照準を合わせることが出来る。
カードそのものとしては、一番の戦犯は《ぶどう弾/Grapeshot(TSP)》だ。現実的に使える解答は限られているし、簡単に回避されるものだった。レースに挑む上で、《ぶどう弾/Grapeshot(TSP)》ストームデッキを打ち破る戦略が大部分を占めていた。コモンでは事実上解答が存在しないってことで、《ぶどう弾/Grapeshot(TSP)》がクビになるのはうなずける。
《激励/Invigorate(MMQ)》がデザインされて印刷されたのは2000年より前の事だ。10年以上たって、「感染」はこの強化呪文を危険なものにしてしまった。《激励/Invigorate(MMQ)》は感染デッキでは無料の2倍《火炎破/Fireblast(VIS)》になって2ターンキルを容易にする。安定して3ターンキルするってわけじゃなかったけれど、フォーマットの中で「最も」3ターンキルしやすいのはコイツだった。《ぶどう弾/Grapeshot(TSP)》と同様、解答はとても限られていた
―《使徒の祝福/Apostle’s Blessing(NPH)》や《巨森の蔦/Vines of Vastwood(ZEN)》で除去を弾くときは完璧な解答は唯一、《消灯/Curfew(USG)》だけだった。
《巣穴からの総出/Empty the Warrens(TSP)》はストームの勝ち筋としては一番フェアだった。これだけは、全色がトークン軍団に対する回答を持っていたからね。それでも、もしウィザーズがPauperをシルバーバレットフォーマットから変えようっていうんならこのカードが禁止されるのは納得できるね。
これらの変化はPauperにとって良いことだろうか?僕は、長期的には良くなるんじゃないかって思えるようになってきた。安定したフォーマットは必ずしも健全なフォーマットを意味しないし、今まであった支柱を取り除くことはPauperが成長するための多様性を生むと気付いたんだ。これらのデッキは時計だった。そして今フォーマットはまるまる1ターン(あるいは2ターン)遅くなった。
この禁止でフォーマットは確実に一新されるだろう。それじゃあPauperのメタゲームは何処に向かうんだろうか?
生け贄ランドストーム、ゴブリンストーム: 死滅
この2つのデッキはフィニッシャーを失ってもはや存続出来ないだろう。外殻は残っているとはいえ、儀式系呪文で大量のマナを生み出してストームの燃料にリソースを投げ打っても確実なフィニッシャーが無いんじゃ仕方がないよね。
赤単ストーム: ほぼ死滅
このデッキの強みは色んな角度から攻めてくる能力にある。《巣穴からの総出/Empty the Warrens(TSP)》のオプション無しでも、悪いバーンデッキかPauper版のAll-In-Red(今後のメタでは行けるかもしれない)にはなるだろう。
感染: 進化
もし感染が生き残るとしたら、何かしら転換が必要だろう。最初のオプションは思いっきりシミックにしてもっとアグロコントロールよりのテンポ指向にすることだ。これだとカウンター、《荒廃の工作員/Blighted Agent(NPH)》、そしてドロー呪文が積めるようになる。《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe(NPH)》や《使徒の祝福/Apostle’s Blessing(NPH)》のようなカードも全部含めてパーツをカットして2色ストンピィよりのリストにする必要があるだろう。
別のオプションは緑を放棄してディミーアに向かうことだ。もはや2ターンキルのために《ぎらつかせのエルフ/Glistener Elf(NPH)》が必須ってわけじゃないから《疫病のとげ刺し/Plague Stinger(SOM)》、《荒廃の工作員/Blighted Agent(NPH)》、《胆液爪のマイア/Ichorclaw Myr(SOM)》と2マナ域が豊富だ。《邪悪なる力/Unholy Strength(9ED)》と《闇の好意/Dark Favor(M13)》は、相手の脅威を回避すれば控えめな《怨恨/Rancor(ULG)》になりすましてくれる(よりアグレッシブな構築をするなら《吸血鬼の一噛み/Vampire’s Bite(ZEN)》ってのもある)。このデッキは優良除去と妨害要素でクリーチャー群を補助して毒を押し通せるんじゃないかな。
時間の亀裂ストーム: 勝ち組、要注意
”もう1つの”ストームデッキはその壊れたメカニズムを直接の勝ち手段に使ってはいないが、クリーチャーで相手を苛めるために利用している。3ターンで勝てることもあるが、始動するのは大体4、5ターン目くらいだ(これはウィザーズがPauperで望むコンボのスピードのように思える)。時間の亀裂ストームはゲーム中に複数回コンボを発動させて勝利につなげるだけの力がある。大それた目標を思い描くかもしれないが、(《石の雨/Stone Rain(4ED)》や墓地対策のような)確かな脆弱性も持ち合わせている。僕はコイツがフォーマットにおける主力のコンボデッキになるんじゃないかと思うが、かつてのストームのレベルほど支配的にはならないだろうね。
ポスト:大勝利
今回の禁止の影響でウハウハになってるやつがいるとすれば、そいつはポストに間違いない。ストームと感染はこのデッキの最悪のマッチアップだった(呪禁だって簡単じゃなかったけどね)。この2つのデッキが使えなくなったことで、ポストは現状最高のデッキになった。メインデッキは相手を止めることに注力していて、居なくなったデッキへの回答だった尖ったカードのためのサイドボード枠が、このデッキをより強くするだろう。
時間の亀裂ストームみたいに、明らかな最善手は皆がコイツのために必死になることだろう。《石の雨/Stone Rain(4ED)》、《広がりゆく海/Spreading Seas(ZEN)》に《汚染された地/Contaminated Ground(ROE)》ですら《雲上の座/Cloudpost(MRD)》を無力化するために見受けられるかもしれない。ポスト系コントロールの多種多様な除去と戦うために、ダメージ効率の良いクリーチャーの代わりに除去耐性を持つものが復権するだろう。
不安なのは、このデッキの勝ち手段が他のデッキの戦略をせいぜい疑わしいものにしてしまわないかってことだ。ポストより早く勝利出来るデッキが十分に存在して環境の活気が保たれることを祈るよ。
デルバー:びっくりするほどそのまんま
デルバーは以前とかなり同じような位置に落ち着いた。最悪のマッチアップの1つだった感染は失われたけどタイミングのいいカウンターによってストームを喰ってやることも出来なくなった。ポストはキツいマッチアップだし、ストームに抑え込まれていたデッキ(白ウィニー・ストンピィ)は以前のPauperの王者に対して有利だ。これらの観点から、デルバーは新フォーマットで前よりキツくなるだろうね。
じゃあ何が出来る?僕の意見では、《凍結燃焼の奇魔/Frostburn Weird(RTR)》のところをもっと重くするべきだ。このカードは序盤の攻撃を止めるキーカードで、増加中のアグロデッキの猛攻を遅らせることにかけては驚くべき働きをする。《方解石のカミツキガメ/Calcite Snapper(WWK)》はポスト相手に被覆が刺さって現実的な代替案だよ。
ストンピィ・白ウィニー・ゴブリン:増加
これら3つのアグロデッキには共通点があった。ストームに弱いんだ。どのデッキも《巣穴からの総出/Empty the Warrens(TSP)》への回答を(白ウィニーは《ぶどう弾/Grapeshot(TSP)》を無効にするために《心優しき一角獣/Benevolent Unicorn(MIR)》も)持ってはいたが、依然として、「回答が引けるかどうか」の勝負だった。ストームが姿を消した今、これらのデッキは以前より有望な選択肢だ。ストンピィと白ウィニーはデルバーと戦えるし、《死の火花/Death Spark(ALL)》を積んだゴブリンだって有利だ。問題は《微光地/Glimmerpost(SOM)》でかなりのライフゲインをしてくるポストだ。ゴブリンは《モグの戦争司令官/Mogg War Marshal(TSP)》(と、もしかしたら《マイアの種父/Myr Sire(MBS)》)で除去対策が出来る。《ギルドパクトの守護者/Guardian of the Guildpact(DIS)》は除去に強く、以前から使われてきた。最後にストンピィは、《巨森の蔦/Vines of Vastwood(ZEN)》や《かき集める勇気/Gather Courage(RAV)》で自軍を守ったり、コントロールへの対策は無数に持っている。
親和:変化なし
親和はほとんど禁止の影響を受けていない。このデッキはなにより自分自身の引きに依存しているんだ。理論的には、2つの不利なマッチアップが居なくなったことで良くはなっただろうが、新規プレイヤーにとって支配的ではないね。
呪禁アグロ:大穴
これは新しい感染なのかい?オーラアグロはポストに対して有利だし、時間の亀裂ストームに対しても耐性がある。他のビートダウンデッキと競争することが出来るし従来の軸を無視するのには最高の選択肢だ。多くの人が言っているけど、このデッキはまだ不安定で、除去を順応させれば完全に打ちのめすことが出来るよ。
ネズミ:齧り続ける
黒いコントロールデッキは、その特徴的なクリーチャータイプと同じように、ずっと生き残ってきた。ストームが逝って、このデッキは手札破壊偏重(例えば《精神ねじ切り/Wrench Mind(MRD)》)からポストとの戦闘へと動き始めることが出来る。これも、使える土地破壊や墓地対策など、サイドボードに大きく依存するアーキタイプだ。
間違いなく、Pauperは変わった。ウィザーズは双方向性を促進したということと、皆にコモンでマジックをして欲しいってことを明示したんだ。新フォーマットにははるかに多くのデッキデザイン空間があって、僕がそれを探索しないわけがない。
そして、数日熟考した後、僕はこの変更が良かったものだと考えている。ああ、Pauperは変わった。しかしフォーマットは大きな枷を外したんだ。デッキは、今や細かい調整どころか、根本から作り直す段階だ。フォーマットは易しくなっていない―それは遅くなった。僕個人はPauperの進展に加わることが出来ることに信じられないくらい興奮しているよ。
Keep slingin’ commons-
-Alex
SpikeBoyM on Magic Online
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追記:公式にてPauperの禁止に関する説明がなされました(http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/ld/232)
要約すると、《ぶどう弾/Grapeshot(TSP)》と《巣穴からの総出/Empty the Warrens(TSP)》は対策が少なすぎるし、速すぎて駄目。
感染はクリーチャー除去で対策出来るとはいえやっぱり早すぎるし、《激励/Invigorate(MMQ)》自体が除去対策になってるので駄目。
という感じでした。
個人的には当たり外れの大きい記事だと思いますが、今月は面白かったので翻訳なんてことをしてみました。意訳しまくりの拙訳ですが興味があったらどうぞ。
シミック感染やディミーア感染は無理矢理GTCを絡めた感がありますが、その他はだいたい納得できる気がします。
The January Pauper Bans by Alex Ullman 2/01
http://www.starcitygames.com/article/25606_The-January-Pauper-Bans.html
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Pauperの禁止リストにカードが加わるのは、フォーマットが制定されてからたったの2回目だ。しかも、禁止リストはもとの2枚から5枚に、250%増しだ。
2月6日以降、Pauperの禁止リストは
《頭蓋囲い/Cranial Plating(5DN)》
《大あわての捜索/Frantic Search(ULG)》
《ぶどう弾/Grapeshot(TSP)》
《巣穴からの総出/Empty the Warrens(TSP)》
《激励/Invigorate(MMQ)》
となる。
変化っていうのは恐ろしいもんだ。
この改訂のもたらすものを深く掘り下げる前に、ハッキリさせておきたい。僕は、「僕の信じるPauperのあるべき姿に基づく」ならば禁止しなきゃならないものの事なんて考えていなかった。Pauperは始めにコモン限定の競技マジックとして制定された。フォーマットが成長するにしたがって、メタゲームは長期間停滞し、新セットがリリースされたときの1,2個の革新によって特徴付けられてきた。(コンボ)デッキは、より多くのカードがあるより広いフォーマットの方が強い傾向にある。《激励/Invigorate(MMQ)》と「感染」のように意図的でない結果を招くこともある。
それでも、このフォーマットはギリギリのバランスで存続してきた。僕らは変えないことを支持してきたんだ。何故ならば、支柱を引っこ抜いてしまうことで他のデッキがフォーマットをひっくり返してしまうのが怖かったからね(まして2本だ)。こういう恐れっていうのは大体において根も葉も無いもので、未知のものへの恐怖心のせいにすることが出来る。感染はストームを抑制するために不可欠だったし、ストームは色んなデッキを「フェア」に保ってきた。この2つの極端なデッキを取り去ってしまうってことは、「ぶっ壊れた」ことをするデッキのほとんどは《雲上の座/Cloudpost(MRD)》ベースのデッキみたいなヤツだってことだ。フォーマットがこの転換を処理できるかどうかは時が教えてくれるだろう。
これはさっき言ったイタリック体のところ(訳注:僕の信じるPauperのあるべき姿のこと)に繋がる。僕のフォーマットに対する個人的な意見は僕のフォーマット認識に基づいている。
ウィザーズは、この記事の執筆時点では、彼らがPauperに付いてどんな見通しをもっているのかを明確に示してはいない。エターナルフォーマットであり、(それ単独でも独自の競争コミュニティでもありながら)しかし他の競技プレイへの入口でもある。もし彼らがフォーマットの行く末の明確なヴィジョンを示してくれたら僕は(そして他のみんなもきっと)安心できるんだろうけど、今回の禁止から今後のフォーマットの方向性を読み取ることはできる。暗示された方向性っていうのは「シルバーバレットを持ってるか?」って問題を投げかけてくるようなフォーマットとはかけ離れている。
フォーマットからカードを取り除くってことには別の根本的な恐ろしさがある。滑りやすい坂道みたいにね。Pauperは競技フォーマットで、そこには、ある戦略を取り除くことでコモン限定のマジックが他のものに劣ってしまうんじゃないかって不安がある。エキサイティングで常軌を逸したプレイに満ちたPauper。具体的な不安っていうのは《スケイズ・ゾンビ/Scathe Zombies(10E)》に対する《ルーン爪の熊/Runeclaw Bear(M12)》みたいなものなんだろう。
何の根拠もないけど、ウィザーズはカードを直ぐに禁止したりはしない。カードを取り除くことはPauperを「易しくする」ための試みじゃなかった。この禁止はフォーマットを遅くすることで活気を注入するための措置のように見える。今では、《雲上の座/Cloudpost(MRD)》が揃いだしてゲームを支配しきる前のゲームの中盤を戦うことに照準を合わせることが出来る。
カードそのものとしては、一番の戦犯は《ぶどう弾/Grapeshot(TSP)》だ。現実的に使える解答は限られているし、簡単に回避されるものだった。レースに挑む上で、《ぶどう弾/Grapeshot(TSP)》ストームデッキを打ち破る戦略が大部分を占めていた。コモンでは事実上解答が存在しないってことで、《ぶどう弾/Grapeshot(TSP)》がクビになるのはうなずける。
《激励/Invigorate(MMQ)》がデザインされて印刷されたのは2000年より前の事だ。10年以上たって、「感染」はこの強化呪文を危険なものにしてしまった。《激励/Invigorate(MMQ)》は感染デッキでは無料の2倍《火炎破/Fireblast(VIS)》になって2ターンキルを容易にする。安定して3ターンキルするってわけじゃなかったけれど、フォーマットの中で「最も」3ターンキルしやすいのはコイツだった。《ぶどう弾/Grapeshot(TSP)》と同様、解答はとても限られていた
―《使徒の祝福/Apostle’s Blessing(NPH)》や《巨森の蔦/Vines of Vastwood(ZEN)》で除去を弾くときは完璧な解答は唯一、《消灯/Curfew(USG)》だけだった。
《巣穴からの総出/Empty the Warrens(TSP)》はストームの勝ち筋としては一番フェアだった。これだけは、全色がトークン軍団に対する回答を持っていたからね。それでも、もしウィザーズがPauperをシルバーバレットフォーマットから変えようっていうんならこのカードが禁止されるのは納得できるね。
これらの変化はPauperにとって良いことだろうか?僕は、長期的には良くなるんじゃないかって思えるようになってきた。安定したフォーマットは必ずしも健全なフォーマットを意味しないし、今まであった支柱を取り除くことはPauperが成長するための多様性を生むと気付いたんだ。これらのデッキは時計だった。そして今フォーマットはまるまる1ターン(あるいは2ターン)遅くなった。
この禁止でフォーマットは確実に一新されるだろう。それじゃあPauperのメタゲームは何処に向かうんだろうか?
生け贄ランドストーム、ゴブリンストーム: 死滅
この2つのデッキはフィニッシャーを失ってもはや存続出来ないだろう。外殻は残っているとはいえ、儀式系呪文で大量のマナを生み出してストームの燃料にリソースを投げ打っても確実なフィニッシャーが無いんじゃ仕方がないよね。
赤単ストーム: ほぼ死滅
このデッキの強みは色んな角度から攻めてくる能力にある。《巣穴からの総出/Empty the Warrens(TSP)》のオプション無しでも、悪いバーンデッキかPauper版のAll-In-Red(今後のメタでは行けるかもしれない)にはなるだろう。
感染: 進化
もし感染が生き残るとしたら、何かしら転換が必要だろう。最初のオプションは思いっきりシミックにしてもっとアグロコントロールよりのテンポ指向にすることだ。これだとカウンター、《荒廃の工作員/Blighted Agent(NPH)》、そしてドロー呪文が積めるようになる。《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe(NPH)》や《使徒の祝福/Apostle’s Blessing(NPH)》のようなカードも全部含めてパーツをカットして2色ストンピィよりのリストにする必要があるだろう。
Simic Infect by Alex Ullman
クリーチャー(19)
4 《胆液爪のマイア/Ichorclaw Myr(SOM)》
4 《荒廃のマンバ/Blight Mamba(SOM)》
4 《荒廃の工作員/Blighted Agent(NPH)》
3 《嚢胞抱え/Cystbearer(SOM)》
4 《ぎらつかせのエルフ/Glistener Elf(NPH)》
呪文(19)
4 《怨恨/Rancor(ULG)》
3 《地うねり/Groundswell(WWK)》
4 《巨森の蔦/Vines of Vastwood(ZEN)》
4 《マナ漏出/Mana Leak(STH)》
2 《取り繕い/Turn Aside(SOM)》
2 《静かな旅立ち/Silent Departure(ISD)》
土地(22)
10 《森/Forest(RTR)》
8 《島/Island(RTR)》
4 《シミックのギルド門/Simic Guildgate(GTC)》
別のオプションは緑を放棄してディミーアに向かうことだ。もはや2ターンキルのために《ぎらつかせのエルフ/Glistener Elf(NPH)》が必須ってわけじゃないから《疫病のとげ刺し/Plague Stinger(SOM)》、《荒廃の工作員/Blighted Agent(NPH)》、《胆液爪のマイア/Ichorclaw Myr(SOM)》と2マナ域が豊富だ。《邪悪なる力/Unholy Strength(9ED)》と《闇の好意/Dark Favor(M13)》は、相手の脅威を回避すれば控えめな《怨恨/Rancor(ULG)》になりすましてくれる(よりアグレッシブな構築をするなら《吸血鬼の一噛み/Vampire’s Bite(ZEN)》ってのもある)。このデッキは優良除去と妨害要素でクリーチャー群を補助して毒を押し通せるんじゃないかな。
Dimir Infect by Alex Ullman
クリーチャー(16)
4 《死体の野犬/Corpse Cur(SOM)》
4 《胆液爪のマイア/Ichorclaw Myr(SOM)》
4 《荒廃の工作員/Blighted Agent(NPH)》
4 《疫病のとげ刺し/Plague Stinger(SOM)》
呪文(22)
2 《闇の好意/Dark Favor(M12)》
4 《邪悪なる力/Unholy Strength(M11)》
3 《破滅の刃/Doom Blade(M12)》
4 《マナ漏出/Mana Leak(STH)》
4 《禁制/Prohibit(INV)》
1 《殺し/Snuff Out(MMQ)》
2 《着実な進歩/Steady Progress(SOM)》
2 《静かな旅立ち/Silent Departure(ISD)》
土地(22)
9 《島/Island(RTR)》
9 《沼/Swamp(RTR)》
4 《ディミーアのギルド門/Dimir Guildgate(GTC)》
訳注:《闇の好意/Dark Favor(M13)》には《よじれた実験/Twisted Experiment(UDS)》という上位互換があります
時間の亀裂ストーム: 勝ち組、要注意
Simic Tempral Storm by DoGBiscuit
クリーチャー(13)
《古術師/Archaeomancer(M13)》
《フェアリーの大群/Cloud of Faeries(ULG)》
《とぐろ巻きの巫女/Coiling Oracle(DIS)》
《記憶の壁/Mnemonic Wall(ROE)》
《熟考漂い/Mulldrifter(LRW)》
呪文(29)
2 《肥沃な大地/Fertile Ground(USG)》
2 《はびこり/Overgrowth(STH)》
3 《楽園の拡散/Utopia Sprawl(DIS)》
3 《幽霊のゆらめき/Ghostly Flicker(AVR)》
4 《断絶/Snap(ULG)》
2 《強迫的な研究/Compulsive Research(RAV)》
1 《思案/Ponder(M12)》
4 《定業/Preordain(M11)》
4 《血清の幻視/Serum Visions(5DN)》
3 《時間の亀裂/Temporal Fissure(SCG)》
土地(18)
7 《島/Island(RTR)》
7 《森/Forest(RTR)》
4 《シミックの成長室/Simic Growth Chamber(DIS)》
Esper Temporal Storm by alfonso_666666
クリーチャー(20)
1 《古術師/Archaeomancer(M13)》
4 《フェアリーの大群/Cloud of Faeries(ULG)》
1 《記憶の壁/Mnemonic Wall(ROE)》
3 《熟考漂い/Mulldrifter(LRW)》
4 《夜景学院の戦闘魔道士/Nightscape Battlemage(PLS)》
3 《海門の神官/Sea Gate Oracle(ROE)》
4 《陽景学院の戦闘魔道士/Sunscape Battlemage(PLS)》
呪文(18)
2 《幽霊のゆらめき/Ghostly Flicker(AVR)》
1 《虹色の断片/Prismatic Strands(JUD)》
4 《断絶/Snap(ULG)》
4 《強迫的な研究/Compulsive Research(RAV)》
3 《綿密な分析/Deep Analysis(TOR)》
1 《予感/Foresee(FUT)》
3 《時間の亀裂/Temporal Fissure(SCG)》
土地(22)
7 《島/Island(RTR)》
2 《平地/Plains(RTR)》
2 《沼/Swamp(RTR)》
3 《アゾリウスの大法官庁/Azorius Chancery(DIS)》
3 《ディミーアの水路/Dimir Aqueduct(RAV)》
2 《進化する未開地/Evolving Wilds(M13)》
3 《広漠なる変幻地/Terramorphic Expanse(TSP)》
”もう1つの”ストームデッキはその壊れたメカニズムを直接の勝ち手段に使ってはいないが、クリーチャーで相手を苛めるために利用している。3ターンで勝てることもあるが、始動するのは大体4、5ターン目くらいだ(これはウィザーズがPauperで望むコンボのスピードのように思える)。時間の亀裂ストームはゲーム中に複数回コンボを発動させて勝利につなげるだけの力がある。大それた目標を思い描くかもしれないが、(《石の雨/Stone Rain(4ED)》や墓地対策のような)確かな脆弱性も持ち合わせている。僕はコイツがフォーマットにおける主力のコンボデッキになるんじゃないかと思うが、かつてのストームのレベルほど支配的にはならないだろうね。
ポスト:大勝利
今回の禁止の影響でウハウハになってるやつがいるとすれば、そいつはポストに間違いない。ストームと感染はこのデッキの最悪のマッチアップだった(呪禁だって簡単じゃなかったけどね)。この2つのデッキが使えなくなったことで、ポストは現状最高のデッキになった。メインデッキは相手を止めることに注力していて、居なくなったデッキへの回答だった尖ったカードのためのサイドボード枠が、このデッキをより強くするだろう。
時間の亀裂ストームみたいに、明らかな最善手は皆がコイツのために必死になることだろう。《石の雨/Stone Rain(4ED)》、《広がりゆく海/Spreading Seas(ZEN)》に《汚染された地/Contaminated Ground(ROE)》ですら《雲上の座/Cloudpost(MRD)》を無力化するために見受けられるかもしれない。ポスト系コントロールの多種多様な除去と戦うために、ダメージ効率の良いクリーチャーの代わりに除去耐性を持つものが復権するだろう。
不安なのは、このデッキの勝ち手段が他のデッキの戦略をせいぜい疑わしいものにしてしまわないかってことだ。ポストより早く勝利出来るデッキが十分に存在して環境の活気が保たれることを祈るよ。
デルバー:びっくりするほどそのまんま
デルバーは以前とかなり同じような位置に落ち着いた。最悪のマッチアップの1つだった感染は失われたけどタイミングのいいカウンターによってストームを喰ってやることも出来なくなった。ポストはキツいマッチアップだし、ストームに抑え込まれていたデッキ(白ウィニー・ストンピィ)は以前のPauperの王者に対して有利だ。これらの観点から、デルバーは新フォーマットで前よりキツくなるだろうね。
じゃあ何が出来る?僕の意見では、《凍結燃焼の奇魔/Frostburn Weird(RTR)》のところをもっと重くするべきだ。このカードは序盤の攻撃を止めるキーカードで、増加中のアグロデッキの猛攻を遅らせることにかけては驚くべき働きをする。《方解石のカミツキガメ/Calcite Snapper(WWK)》はポスト相手に被覆が刺さって現実的な代替案だよ。
ストンピィ・白ウィニー・ゴブリン:増加
これら3つのアグロデッキには共通点があった。ストームに弱いんだ。どのデッキも《巣穴からの総出/Empty the Warrens(TSP)》への回答を(白ウィニーは《ぶどう弾/Grapeshot(TSP)》を無効にするために《心優しき一角獣/Benevolent Unicorn(MIR)》も)持ってはいたが、依然として、「回答が引けるかどうか」の勝負だった。ストームが姿を消した今、これらのデッキは以前より有望な選択肢だ。ストンピィと白ウィニーはデルバーと戦えるし、《死の火花/Death Spark(ALL)》を積んだゴブリンだって有利だ。問題は《微光地/Glimmerpost(SOM)》でかなりのライフゲインをしてくるポストだ。ゴブリンは《モグの戦争司令官/Mogg War Marshal(TSP)》(と、もしかしたら《マイアの種父/Myr Sire(MBS)》)で除去対策が出来る。《ギルドパクトの守護者/Guardian of the Guildpact(DIS)》は除去に強く、以前から使われてきた。最後にストンピィは、《巨森の蔦/Vines of Vastwood(ZEN)》や《かき集める勇気/Gather Courage(RAV)》で自軍を守ったり、コントロールへの対策は無数に持っている。
親和:変化なし
親和はほとんど禁止の影響を受けていない。このデッキはなにより自分自身の引きに依存しているんだ。理論的には、2つの不利なマッチアップが居なくなったことで良くはなっただろうが、新規プレイヤーにとって支配的ではないね。
呪禁アグロ:大穴
これは新しい感染なのかい?オーラアグロはポストに対して有利だし、時間の亀裂ストームに対しても耐性がある。他のビートダウンデッキと競争することが出来るし従来の軸を無視するのには最高の選択肢だ。多くの人が言っているけど、このデッキはまだ不安定で、除去を順応させれば完全に打ちのめすことが出来るよ。
ネズミ:齧り続ける
黒いコントロールデッキは、その特徴的なクリーチャータイプと同じように、ずっと生き残ってきた。ストームが逝って、このデッキは手札破壊偏重(例えば《精神ねじ切り/Wrench Mind(MRD)》)からポストとの戦闘へと動き始めることが出来る。これも、使える土地破壊や墓地対策など、サイドボードに大きく依存するアーキタイプだ。
間違いなく、Pauperは変わった。ウィザーズは双方向性を促進したということと、皆にコモンでマジックをして欲しいってことを明示したんだ。新フォーマットにははるかに多くのデッキデザイン空間があって、僕がそれを探索しないわけがない。
そして、数日熟考した後、僕はこの変更が良かったものだと考えている。ああ、Pauperは変わった。しかしフォーマットは大きな枷を外したんだ。デッキは、今や細かい調整どころか、根本から作り直す段階だ。フォーマットは易しくなっていない―それは遅くなった。僕個人はPauperの進展に加わることが出来ることに信じられないくらい興奮しているよ。
Keep slingin’ commons-
-Alex
SpikeBoyM on Magic Online
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追記:公式にてPauperの禁止に関する説明がなされました(http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/ld/232)
要約すると、《ぶどう弾/Grapeshot(TSP)》と《巣穴からの総出/Empty the Warrens(TSP)》は対策が少なすぎるし、速すぎて駄目。
感染はクリーチャー除去で対策出来るとはいえやっぱり早すぎるし、《激励/Invigorate(MMQ)》自体が除去対策になってるので駄目。
という感じでした。
コメント
環境についての見通しは概ね同意ですね。Post対策でハンデス積んだ黒単ドレッジもチャンスあるかも?って考えてます。
参考になりました。
リンクさせて下さい。ヨロシクどうぞ。
参考になりました。
リンクさせて下さい。ヨロシクどうぞ。
Postの増加とコンバットする機会の増加、あとは呪禁(シラナ含む)とのマッチも増えそうな感じなのでこれからの対策が大変ですね。
ハンデスメインにするとウィニーに弱くなっちゃうのが悩みどころですね。でもポスト以外に時間の亀裂ストームや青単にも効きそうなのでメタ次第でしょうか。
>>ながのみわさん
参考になったのなら幸いです!リンク返しましたのでヨロシクどうぞ。
>>show07さん
そう言って貰えると嬉しいです!
>>Laffineさん
呪禁への対策は限られてますが、メタられ出すと結構脆いんじゃないかなーと思ってます。引きムラが大きくて安定しないみたいなんですよね。
まだ環境が落ち着いていないのでサイドボードは悩みどころです・・・
とりあえず書き直したけど、書き溜めた時のバックアップ取っとけばよかった。